東京大学 東洋文化研究所 佐藤仁研究室

SATO Jin Lab.

Institute for Advanced Studies on Asia, University of Tokyo

出力検討会

「むずかしいことをやさしく、やさしいことを深く、深いことを愉快に、愉快なことをまじめに書く」
(井上ひさし)

出力とは何か

「出力」とは、論文や本を通じてアイディアを世に問うことである。それは、単に調べたこと(=入力)を書いて報告することではなく、調べたことの学術的な意味を他人に伝わる知的努力である。この「出力」のちからを鍛錬する場が、「出力検討会」(出力検)である。佐藤研究室の関係者が中心に、互いの原稿を検討する会であり、2003年から月1回のペースで開催してきた。

出力検のメリットは次の5点である。

  1. 期限に間に合わせる圧力が、出力のノルマをつくる。
  2. 他人の原稿を読む(読まされる)ことで、出力のスタイルの幅を自覚できる。
  3. コメントを生でやり取りすることで討論の作法を身に着けることができる。
  4. 自分の論文に有益なフィードバックをもらうことができる。
  5. 競争心に火がつき、仲間の連帯感が生まれ、研究の足腰が強くなる。

2020年度の出力大賞

新型コロナウイルスの影響で、今年度の出力検はいったん中断しましたが、10月に再開されました。短い期間でしたが、精一杯書かれた原稿、鋭いご指摘や励ましのお言葉をたくさんいただきまして、本当にありがとうございました。激しく変わっている世界の中で、変わらない出力検の絆の大切さを改めて感じさせられる1年間でした。

第三回「出力大賞」は、博士後期課程三年の汪牧耘(マッキー)が受賞しました。懇親会では、2018・2019年度の受賞者の華井先生と佐藤先生は受賞者のマッキーに、『未来探求2050』とコアラのマーチ(いちご)のプレゼントを贈りました。

マッキーから受賞の一言

「原稿を書くこと。コメントをすること。コメントを受け入れること。言葉を絶えず編み直している中で、次の道が知性の海底から浮かび上がっているように感じます。私の探求を支えてくださった皆さん、本当にありがとうございました。」

2019年度の出力大賞

第二回「出力大賞」は、佐藤研OGとして日頃から愛を込めたパワフルのコメントで会を盛り上げてくださっている華井和代さんが受賞されました。二連覇です!新型コロナウイルスの影響で直接に会えない皆さんは、Zoomを通して一年間の振り返りと来年度の抱負を共有しました。

華井さんから受賞の一言

「原稿を書いたり読んだりするのはとっても地味な作業ですが、こうやって1年間のがんばりを評価してもらえると嬉しいですね。来年度もぶっちぎりの2連覇をめざしてがんばります!出力せざる者、食うべからず!」
2018年度の出力検にご参加くださったみなさま、ありがとうございました!2019年度も引き続き執行部で会を盛り上げていきたいと思います! (記:久留島)

出力大賞を新たに設けました

会への貢献度(参加・出力の回数、コメントの質)と学術的成果(投稿論文、学会発表など)を点数化して、一名選出する試みを行いました。一年間の努力を可視化することで参加者の意欲を奮起し、これまで以上に会が活性化することを目指しました。

第一回「出力大賞」は、佐藤研OGとして日頃から鋭いコメントで会を盛り上げてくださっている華井和代さんが受賞されました。参加者で華井さんを労う納会を開催し、一年間の振り返りと来年度の抱負を共有しました。

✍佐藤研の博士課程院生が中心となり、お互いの論文原稿を磨き合う場が「出力検」です。
出力検終了後に「出力のことば」を書き留め、出力名言集として蓄積していくことにしました。

2018年度

出力のことば

◆2018年7月24日
・「現地に中立」ではなく、「根拠に忠実」である。 (研究者の姿勢について) 
・ 出版した文字は死んだ後も残る。

◆2018年6月11日
・「論敵を引き寄せる価値観の出し方を考えよう!」

2015年度

出力のことば

◆2016年1月20日
・「発表における質疑の回答を短くすることで、多くの人に質問機会と満足を与えられる」

◆2015年12月2日
・「オッカムのかみそりで、筋肉質な論文を」
・「(天体の運行を説明するのに)神の存在で説明すれば済むのに、たくさんの天使を用いるのは無駄である」(William of Ockham) = 一行で言えることを二行で言わない(佐藤仁)    

◆2015年10月14日
「それでもその日はやってくる(だから少しずつ書き溜めていこう!)」

◆2015年10月2日
「出力せざる者は食うべからず(リン)」

2012年度

論文はコミュニケーション

2012年9月21日
今回は、堀さんと私、不肖杉山が出力しました。
この論文はどうして面白いのか、ということがまず読者に伝わるように。 
独善的にならず、読者に「読む気」を起こしてもらえるように。 
論文は、読者とのコミュニケーションである、という佐藤先生の言葉が身にしみました。 (杉山) 

 

初心

2012年7月23日
今回のエントリーは、華井さんと林さん。
論文のテーマは、平和教育の実践と、アフガニスタンの農村社会の構造。  
それから林さんの博論の目次を検討しました。  

素材(対象)を吟味して、道具(学)を検討して、
加工(分析)して、組み立て(構成)を眺めてみる。

そんな作業が論文を書くことだと再認識しました。 (王)

 

出力祭り

2012年5月7日
今回は佐藤先生、OBの王さん、そして華井さんが出力しました。
佐藤先生はご自身の文章に「つや」を出すことにこだわっていらっしゃいます。
それはつまり、ある特定の読み手の心に染み込むような文章を書くことであるのだと思います。
私もいつかそんな文章が書けるようになりたい!!
地道に頑張ろうと思った一日でした。(堀)

 

新年度出力検スタート

2012年4月6日
新年度最初となる今回。
佐藤先生からは
 「月に1本とは言わないけれど、せめて年2本は論文を発表しましょう。
 それを5年間続けて、10本の論文を蓄積しましょう!」
という激励がありました。

出力者は堀さんと杉山さん。
博論に向けて、まずはサーベイ論文の執筆からのスタートでした。